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今年の埼玉県の入学試験では次のような出題がありました。

国語4.問5「Aさんのグループでは、この文章で筆者が述べたいことを次のようにまとめました。 もし、このとき、あなたがAさんのグループの一員で、この文章で筆者が述べたいことをまとめるとしたらどのようにまとめますか。 空欄にあてはまる内容を、20字以上25字以内で書きなさい。」要は、「筆者が述べたいことをまとめなさい」という問題です。 また、国語6は資料が与えられ、「国語の授業で、この資料をもとに『読書』について話し合いをすることになり、一人一人が自分の考えを文章にまとめることにしました。 あとの注意に従ってあなたの考えを書きなさい。」要は「あなたの考えを書きなさい」という問題です。

このような授業になぞらえた出題方法は、入学試験が単なる知識や能力を試すものではなく、勉学に対する関心・意欲・態度を測るものという建前があるために採られていると思われます。 解く側にとっては、問題に関係ない余分なことに付き合っている暇はないというのが正直なところでしょう。 また、15歳の生徒を対象にしているにしては、幼稚な感じを受けると言わざるを得ません。 にもかかわらず、ここ数年、このような出題方法が盛んに採られています。

数学の問題では、これも従来通りなのですが、やたらと図形の問題が目立ちました。 問題用紙に占める量的割合は6分の5くらい(時間割合もほぼ同様?)。 それでも配点割合は、40点満点中の20点(関数は除いて)、ちょうど半分でした。 点数で半分なら良いかとも思うのですが、高校の数学を進める上での基礎学力を測るとしたら、恐らくその役は果たせないと思われます。 高校の数学は、もっとはるかに、文字式・数式の計算力や関数の取り扱い方を基礎としています。 来年以降は改めて欲しいものです。

英語の問題はリスニングの量が増えました。量的割合は4割ぐらいでしょうか。得点では40点中の12点。 読解問題も会話、手紙文、電子メールに関するものと、完全にコミュニケーション重視になりました。 教養として正しい英語を知っていて、英文が読めるということから、日常のコミュニケーションの道具として、どれだけ英語が使えるか、という方向に重点が変わってきました。 「まず役立つ英語」の観点から、これは良い傾向と言えると思います。

いくつか気のついたことを挙げましたが、ここで大事なことは、入試問題のあらを探すことではありません。 大抵はよく考えられた良い問題です。 しかし、入試問題は、受験生にとってだけではなくその後の学習者にとっても、大変大きな影響力を持つ重要なものです。そこで、「問題」は、色々な角度から見て良いに越したことはありません。 みんなで気のついたことを指摘してさらに良いものにしていかなければなりません。

その点で私が気になるのは、入試の翌日に試験問題が新聞に掲載されるわけですが、それに添えられているコメントです。 毎年決まったように「基礎的・基本的な内容について受験生の学力を十分把握できるように出題した」という県教委の出題方針や、それを裏付けるかのような中学校の先生の批評が載ります。 各科目とも、ほとんど異口同音に、「容易」「平易」「妥当」「普通に勉強していれば答えられる」「良問」とあるのです。 入試問題というのは、しかも欠員校から難関校まで公立高校が全て利用する問題では、低得点から高得点まで、学力等の差を公正に得点化することが求められます。 そもそも一律に妥当だの平易だの、誰でもできるだのと、そういう話ではないのです。 指導要領にはそうあっても、それでは入試の役が十分果たせないのですから、そんな視点からしか物が語れないとしたら、教育の現実を著しく歪めることになってしまいます。 数学の問題を「基礎的、基本的な内容を出題している。 普段の学校の授業で、結果だけではなく問題を解く過程を大切にしていれば解ける」(朝日新聞)と言うにあっては、そもそも誰の頭を想定して物を言っているのかという疑問をまず感じてしまいます。 現場で長く教師をしている人が迂闊に言えることではないはずです。

それから、このように指導要領に合った良い問題として褒めようとする、公務員としての気の遣い様が問題です。「結構でした」と仲間公務員の仕事を褒めることが無難に出世につながるとしたら、そしてそのために、誰も何の要望も疑問も提起しないとしたら、試験問題は、ひいては公教育は、よくなろうはずがありません。 新聞社も、紋切り型の出題側の弁と、無批判の論評を毎年載せているようでは、社会の進歩に貢献しているとは言い難くなります。 俗に褒め殺しと言いますが、この場合、それで死ぬのは公教育ですから、そういう体質は早く改まって欲しいものです。万事欠点は付き物、切磋琢磨の姿勢に切り替わることを期待します。

 [TEXT:高橋秀樹(個性を伸ばす教育研究室・伸び伸び塾)]

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